英語教育に関する書籍は、出版年と著者の立ち位置をひとまず頭に置いてから読むように。先週読んだのは、これ。
背景:小学校で英語が教科化されたよ!
視点:学校英語は何がどう変わるの?親は何をどう対策したらいいの?
教育者と保護者でまた「聞きたいこと」は変わってくるとは思うんだけど、この本は保護者の不安や疑問にフォーカスした本。ただし!!何をすればいいか、という具体的なハウツーじゃなくて、そもそもなんで英語教育なのか?子どもに何を求めているのか?その根っこの部分をハッキリさせようよ、って内容。目的(軸となる部分)が自覚出来れば、それに合わせてやるべきこととやらなくてもいいことは見えてくるでしょう、ってこと。
英語教育は言語教育
言葉の運用能力を高めることが言語教育。
やっぱり外すことが出来ないのが母語習得のプロセスと外国語学習との関係。本書ではSLAでお馴染みの理論は二つ:母語も第二言語・外国語も土台となる能力は同じだよ、という点と「日常会話」と「学習言語」は違うよ、という点をサラッと紹介している。
言語習得のプロセスと語学の関係をもっと知りたい人は過去記事でおもしろい本をいろいろ紹介してるので、読んでみてね。
語学に関するオモシロイ本あれこれ+マルチリンガルはこうやってゴガクしている! - ことばのおもしろさ研究所
語学学習を科学的にセめる!効率的・効果的な勉強方法 - ことばのおもしろさ研究所
日本人が英語を話せるようになるために! - ことばのおもしろさ研究所
日常会話をすらすら喋れるからと言って、知的な能力を伴う複雑で抽象的な内容を理解したり話したりできるのかっていうと、それはまた別のハナシ。子どものお喋りレベル→知的な大人へのブレイクスルーがどこかの段階で必要なんだけど、ここには読む力が必要不可欠になってくる。
最終的に身につけてほしい言語能力は「読む力」
読み書き、文法は毛嫌いされている風潮でこういうとケシカランかもしれないけど、学校教育はやっぱり読み書きができるレベルまで到達することを目標にしてほしい、と個人的には思う。
ただし、一字一句直訳、単語帳の裏表、定型文の丸暗記ができればヨシってのは大問題。それはAIに任せればいい。昨日家電量販店で翻訳機2万円台で売ってたの見たけど、今巷で人気のスローガン「使える英語」(道案内・旅行・買い物)は、AIの得意分野なんだから。
決まりきったフレーズの、”正確”な(ネイティブにより近い)発音、圧倒的な語彙数、反応のスピード、そこを張り合うのは人間の時間がもったいない。小学校3年生から中学校卒業にかけての9年間、一生懸命時間をかけても、9年後の翻訳機の精度、AIの学習能力を考えると・・・ねぇ。
で、「読む力」が結構重要になってくる。
翻訳の精度とスピードじゃなくって。言語化されていない「文脈」を読む力。具体的な言葉の意味と、抽象的な意味、その言葉が発せられた意図とか価値観とか、発言者本人も意識できていないようなコトバの裏側にある世界観、そこを自在に行き来できる能力。
そういう、0と1で計算するデジタルなスキルじゃなくて、0とも1とも割り切れないアナログな感性をこれからますます大切にせにゃならんな~、と。
それって、言語化されないノイズを敏感に察知する身体能力でもあって。
身体の変化を「読む力」、内観(俯瞰して自分の状況を把握する)力、そんなもんにも重なってくるな、と思う。
目指したい言葉の運用能力
決まった正答を言い当てるAIに対して、問いの本質を追求する、自ら問いを立てる、仮説(自分なりの答え)を立てて、自分の言葉で他者に伝える。最終的には、ここを目指したいわけで。
で、「具体的にはいつ、なにを、どう、すればいいの?!」とイライラされそうなブログばっかり書いてるけど、やっぱりはずせないんだ、核の部分は。何度も繰り返し書きながら、色んな視点から眺めながら、私は私で一生懸命なにを目指しているのか確認したいので。すぐに役立つ情報ブログじゃなくて、ねぇ。
でも逆に言えば、この根っこの部分(=なんのために)さえ押さえておけば、ある意味「なんでもあり」なんだな、と。
英語を目的ではなく手段にしてしまう
これは「言葉はツールだ」ってのと別の意味で、英語を学ぶためにいろんな取り組みをするんじゃなくて、ここまで書いてきた大きな目的(=言葉の運用能力)のために英語の取り組みをする、って考え方。
今の私はこのスタンスで、我が子含む子どもたちと接している。
幼稚園児(4歳)と日英併読の物語CDとの出会い - ことばのおもしろさ研究所
2~3歳の子どもが楽しめる英語絵本 - ことばのおもしろさ研究所
英語遊びアイディア with 幼児さん - ことばのおもしろさ研究所
幼児さんは、言葉の運用能力の土台づくりを意識している。
この直接的な言語能力プラス、めちゃくちゃダイジになってくるのが「意欲」なんだけど、これはまた長くなるから別の記事で。