ことばのおもしろさ研究所

語学好きな母ちゃんが、子どもの言葉の成長と外国語学習の奥深さ、心に響いた本なんかを記録しているブログ。

3000万語の格差

今週読んだオモシロイ本!!

 

3000万語の格差 : 赤ちゃんの脳をつくる、親と保育者の話しかけ

3000万語の格差 : 赤ちゃんの脳をつくる、親と保育者の話しかけ

 

 

著者は小児人工内耳外科医で、翻訳者は保育界に通じている心理学・行動変容学の博士。『遊びが学びに欠かせないわけ』もそうだったけど、訳者&解説者のあとがきまで濃!密!でおもしろい。

 

 

きっかけは耳の聞こえない子が手術して聞こえるようになったのに、その後「ことばがわかる/話せる」ようになる子と、そうでない子がいることに疑問を思ったから・・・というストーリーから始まって、「親のことば」(特に3歳までの言語環境!!!)がどれほど子どもの未来に影響力を与えるのか、ってはなし。

 

親のことばは、「頭の良さ」「性格の良さ」「人生の幸福度」すべてに関わる大切な大切な要素。栄養バランスは大切ですよ、ってことが常識になったように「親のことば」も大切ですよ、と誰もが思える(そして具体的方法を学べる)社会にしたい。そんな取り組みについても書かれてます。

 

ほほう、と思ったのは、語彙の格差を埋めるための学習プログラムが「語彙の数を増やすだけではダメ」で、失敗してしまったこと。タイトルにある「3000万語の格差」というのは、家庭で交わされる「ことば」の格差について言ってるんだけど、この数は3000万種類の語彙じゃなくて、繰り返し繰り返し使われる言葉も含めた語彙のこと。

 

それから、意味のない会話(雑談)が脳の発達に重要だったってこと。

 

保育者・教育者が心がけておきたいシンプルかつ大切な3つのT;

Tune In(子どもの視点に寄り添って)

Talk More(たくさん)

Take Turns(やりとりを交わす)

 

注意すべきは、子どもが何かで遊んでいるときや集中している時にぴーちくぱーちく口を挟むんじゃないよ、ってこと。

 

kotokotoba.hateblo.jp

 

「3つのT」の場面別、具体的な実践例がたくさん紹介されてて、これって大人同士にも使える(というか人間関係でめっちゃダイジなのにできてない人が多い)ポイントじゃん・・・って思ったり。

 

CAPTIVATE 最強の人間関係術

CAPTIVATE 最強の人間関係術

 

 

伸び率を左右するマインドセットのこと、成長を阻害するほめ言葉のこと、こういう研究はparentingや心理学のブログで結構頻繁に取り上げられているんだけど、日本語の情報が少ないからか、一般的にはまだあんまりなじみがない気がする。

 

 研究データや統計との付き合い方も。

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「いいこだね!」「頭イイね~」「きっとできるよ!」の誉め言葉のシャワー×固定的マインドセットのせいで、「よく見せる」ことに努力してしまう(失敗を避ける、隠す)なんてパターンもある。

 


「偉い!」「いい子!」よりも遥かに効く【子どもの褒め方】

 

子育てはこれがいい!あれがわるい!やっぱりこうがいい!じゃあどうすればいいの!ってなっちゃうのなら、「あいまいさを受け入れる」ことからはじめよう。

 

 

教育熱心な母親でよく聞くパターンが、夫婦の温度差。私は英語育児に関するブログをよく読んでたから、結構多いのかな?と思ったんだけど、どうなんだろう。

 

夫婦間のコミュニケーションの在り方が子どもの語彙力(知性)、将来の人間関係に影響大ですよ、とちょっとドキッとするはなしも。

 

この本は母語のはなしだから、幼児期の外国語についてはほとんど触れられていないんだけど、2歳まではスキルに関係なく(めっちゃ流暢に話せる外国語でも)母語を優先したほうがイイよってことは書いてあった。

 

そこには母語には「心」がのるから。

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言葉から「心」を推し量る経験の大切さは、これからもっと注目されると思う。それはAIにはできないニンゲンの能力だから。

 

感動は伝染する。そして感動は人を動かす。

(正論や理屈じゃ人は動かない)

 

kotokotoba.hateblo.jp

 

うすっぺらいことばを量産できても、「すごい!!」とは思えないもんね。テレビの言葉をぺらぺらと喋れても、コミュニケーションとしての言葉が使えない子、とかね。。

 

子どものマインドセットを「成長型」に促すには、親や社会も成長型のマインドセットを意識しておかないといけない。固定型マインドセットの親は子供に「失敗させないように」働きかける

 

kotokotoba.hateblo.jp

 

 

こういう分野を深堀りしていくと・・・

「一斉保育」や「公教育」の期待している方向性との逆効果っぷりにガックリしちゃうことも多いけど(笑)おもしろいね!

 

子育て支援のくだりも、ウンウンウン!!!とうなずきながら読んだ。だんだんと「親子を集めて楽しませるイベント」になっちゃうんだよなぁ。そんでもってくる人もそれを期待してる「お客さん」になってしまう。なんのつながりも、学びも、生まれない。

 

 

アートについて書かれてたことばを引用。

 

創造性を表現する自由を与えられると、子どもの脳の中ではたくさんの、たくさんのことが起こります。でも、一番は自分で考える、という点でしょう。

算数も読字・読解も、すでにできあがっているルールを学ぶことです。ところが、芸術は子どもが世界のありようを理解するのを助け、この世界の中にいる自分と言う感覚をつくりあげていきます

これが何年も後になって、その時の世界の前向きで革新的な変化につながるかもしれません。

 「芸術」の部分、「遊び」に置き換えられるなぁ!!