著者は予防医学研究者。人間関係と「健康」の関係を、根拠のない精神論ではなくデータに基づいた研究結果からご紹介!
つながりの多様性
友だちの数、というか「人間同士の接点(つながり)の多様性」がキモ。
濃ゆい人間関係=なかよしこよしがダイジって意味じゃないよ。濃い人間関係は「単調なつながり」になるから、逆に好ましくない面もある。
一本の太いパイプに全てを委ねるより、あちこちに張り巡らされるネットワークのなかに自分を位置づける。
所属するコミュニティ(つまり自分の居場所)もたくさんあったほうがいい。コミュニティの規模は大きければ大きいほどいいってわけじゃなく、人間の脳のサイズ的には150人がだいたい定員。チンパンジーは65人くらい。
あちこちにつながりがあると、強いつながりだけじゃなくて弱いつながりもできる。弱いつながりは、人生を展開させてくれる。新しい情報や価値観、視点をくれるから。
具体的なつながりづくりのアイディアもいくつか紹介されていた。マイクロソフトのthink weekという取り組み、大学研究者のサバティカルなどなど。
つながりは居場所であり、逃げ場。
この世で最大の不幸は、戦争でも貧困でもありません。人から見放されて、自分は誰からも必要とされていないと感じることです
(マザーテレサの言葉)
ストレスについて
人間の悩みのほとんどが人間関係、だったっけ。当然ストレスが健康に関係してくるわけで。物理的(身体的)ストレスと精神的ストレスの違い、健康に影響を与える仕組みについても書いてあった。
ストレスに対する反応にファイト・フリーズ・フライ(闘う・かたまる・逃げる)があるけど、もうひとつ。ビー・フレンド。
Be Friends、おともだち作戦、かな。
本書ではおしゃべり、として紹介。女の人は「うんうん」とすぐに分かる。お喋りのストレス発散効果!これも「つながり」による健康効果のひとつ。
ただし愚痴を言うのはその瞬間だけ興奮状態になってスッキリしたような気になるけど、寿命は縮む。呪いは自分に返ってくるってこのことね(笑)
あと、「自分でコントロールできない」と感じることはかなりのストレスになる。
ストレスを緩和する幸せホルモン「セロトニン」
イギリスのgratitude visit(感謝の訪問)という活動が紹介されている。感謝の気持ちを言葉にして(手紙にしたためて)相手に直接渡しに行く。
誰かに感謝することで、幸せな気持ちになる。健康になる。
メールじゃなくて、直接手渡しに行く。自分のコトバを。
もうすぐお盆です。
この感謝の訪問は、故人に対して、でもいい。
思い返すことで、「つながり」が生まれる。
寄付の金額が幸福度にも関係してくるらしい。
与えることで、幸せを感じる。幼児さんはもらうことよりも「どうぞ」を喜んでするように、これは人間に備わった本能なのかもしれない。
Giverですな!
遺伝子の影響
与えること、つながりを維持することを促す遺伝子の存在と、逆につながりを避ける遺伝子の存在。その両方があるから、人間は発展してきた。
もし全員が全員つながりを求めて一か所にくっついていたら、人類は環境の変化やらなんやらで滅びてしまう。孤独を求めて集団からはずれるヤツラがいつの時代も一定数いるから、うまいことばらけて、うまいこと発展する。
つながりを求めないのもまた、多様性。
「バカな蟻」の話を思い出した。
蟻って総重量が地球上ナンバーワンだったか、数が地球上ナンバーワンだったか、そういうわけで「最も発展したコミュニティを形成する生物」として研究した人がいるんだって。
きっと蟻が発展した秘訣はチームワークにある、と踏んで情報伝達能力に注目してみると・・・意外に連絡ミスが多かったり空気を読まない「バカな蟻」がいたりする。
もしひとつの大きな角砂糖に全アリが隊列を乱さず真面目に集中して運んでいたら、それがなくなった時に全員オシマイ。道を間違えるバカな蟻が新しい場所をみつけてくれるから、可能性をひろげる。
・・・そんなような話だった気がする。
幸せを感じるパターンも、遺伝子の影響が大きいらしい。
- 快楽パターン(欲や五感を満たす)
- 意味パターン(そこに意味があると感じる)
- 没頭パターン(夢中になる)
どれが強い?私は2が強いかな~~「アハッ」の快感。
身体的な健康状態の影響力をパーセンテージで分けると
- 生活習慣50%
- 遺伝20%
- 環境20%
- 医療制度10%
遺伝、医療制度は個人でどうこうするのは大変だけど、生活習慣・・・ダイジよね。理屈で分かってても行動を変えるのは難しいのが人間ダケドモ。
それはこういうテクニック(ナッジ!!)を使う!
そんでもって精神面で言うと
- 状況(職業・学歴・収入)10%
- 認知と行動40%
- 遺伝50%
収入に関して言えば、高ければ幸せってわけじゃないことも研究で明らかになってる。
認知と行動は、物事の捉え方や考え方。
視点を切り替える力は、鍛えられる。
遺伝子について、小説みたいに読んで楽しめる本。
成功する目標の立て方
行動面を変えたいなら、目標を立てよう。
目標の立て方には3パターンある。
- 未来のことだけを考えて目標をたてる
- 目の前の困難さに対処するときのように現実だけを考えて目標を立てる
- 未来と現実の間を行ったり来たりしながら目標を立てる
この中で成功しやすい立て方は、3つめ。未来と現実の間を行ったり来たりしながら目標を立てる。これも視点の切り替え!時間軸上で視点を変えるってこと。
まず未来の楽観的イメージ、それから現実の困難さを悲観的に考える順番がベストよって紹介されていた。楽観的に考えて悲観的に行動せよ。
「私」は単体で存在しているわけじゃない
私の意思、は本当に「私の」意思なのか?
自分の行動や感情は自分一人で決めているのではなく、「つながり」の先にある膨大なネットワークの影響を受けているという事実を忘れないようにしてください。
それは空間を超える横の広がりだけじゃない。
時間を超える縦のつながりも。
故人とのつながり、未来の子孫とのつながり、全部「私」に影響を与えている。本当に。