ことばのおもしろさ研究所

語学好きな母ちゃんが、子どもの言葉の成長と外国語学習の奥深さ、心に響いた本なんかを記録しているブログ。

英語教育の定番と誤解

英語教育に関する対照的な本を2冊読み比べてみました。

子どもの未来を広げる「おやこえいご」 ~バイリンガルを育てる幼児英語メソッド~

子どもの未来を広げる「おやこえいご」 ~バイリンガルを育てる幼児英語メソッド~

 

 こっちは子育て中の親に向けた本。「子どもの未来」「最小限のお金と労力でバイリンガル」「英語が苦手なパパママでも大丈夫」「一生英語に困らない」というひじょーに”トキメク”フレーズが表紙に並んでおります。

 

著者本人が教育学分野の教授であること、英語教室を運営されていて、自身の二人のお子さんも現在「グローバルに働いている」ということで、説得力のある「体験談」でもあります。

 

面白かったのは、「お金のためどきと使いどき」という考え方で、幼児期に高い教材を奮発するよりお金を貯めておいて高学年くらいに留学や海外経験などドンッと出してやるってはなし。

 

親がとりくむ英語教育の重要ポイントとして挙げられているのが

☆幼児期は大量のインプット(楽しく)⇦動画の活用

☆週一回の英語教室

 の2点。年齢別のおすすめ動画、イイ英語教室の選び方も紹介してます。

 

英語教育幻想 (ちくま新書)

英語教育幻想 (ちくま新書)

 

 そして色気のない文庫本、こっちを手に取るママは少ないだろうな(笑)こちらは海外の大学で25年教鞭をとってきた言語教育学者からみた英語教育。オフィシャルなもの(学校教育)とインフォーマルなもの(個人の学習)に分けて、日本人が徹底的に誤解していることを指摘している。

 

たとえば、ネイティブスピーカー=アメリカ人=白人という幻想。これは教科書の刷り込み、政府の思惑もあっていまだ根強いらしい。最近は教科書でもアメリカ人以外の登場人物がいるから改善されているようだけど・・・無意識の差別はまだまだある。

 

私たちの思い描く「グローバル」は、皮肉なことに英語によってかなり狭められているんじゃないか?商売として利用される英会話産業は、まぁ、よく聞く話だったけど、日米関係のために推進される英語教育ってのは知らない視点だったから面白かった!

 

章立てが幻想1~幻想10まであって、そのなかから私的に目新しかったものをピックアップすると・・・

 

幻想5 それぞれの国の文化や言語には独特さがある

幻想6 英語ができれば世界中だれとでも意思疎通できる

幻想7 英語力は社会的・経済的成功をもたらす

幻想9 英語は英語で学んだ方がよい

 

幻想6なんかは、先に紹介した『子どもの未来を広げる「おやこえいご」』の最初のチャプター「英語習得の必要性」にそのまま答えるような内容。

 

あ、もちろん、英語の必要性を否定している内容ではないです!でも「盲点」があるのは事実。「確かにそういう視点もあるねー!!」「ここを改善すればより英語教育の質が上がるよね!」と思えるので、英語教育をすすめる方にもおすすめ。

 

イイか、ワルイか!賛成か、反対か!みたいな白黒はっきりさせる必要は全くなく、むしろあわいグラデーションを把握してその中でどこに自分を位置づけるのか自分の頭で考えること。それがめちゃくちゃダイジだ、と個人的には思っているので。

 

その頭の使い方を学べるのも外国語学習だ、って捉えてます。

そういう意味で、教える側としてどう「英語教育」に向き合っていきたいのか、あっち側の意見もこっち側の意見も聞いてみると面白いです。

 

幻想6「英語ができれば世界中誰とでも意思疎通ができる」幻想7「英語力は社会的・経済的成功をもたらす」に関しては、平均思考のワナもある。

 

kotokotoba.hateblo.jp

 

英語は視野を広げる。可能性を増やす。

それを事実にするためには、英語が視野を狭める可能性も頭に入れておいた方がいい。それは英語学習そのものじゃなくて、捉え方(無自覚の差別意識)が原因で。ネイティブ信仰・生きた英語信仰の日本人が頑張っていくら流ちょうな英語を話しても、非ネイティブな自分はいつまでも「生きていない英語」話者という立場に甘んじるわけだし。

 

英語力即ち仕事力(仕事がデキル⇒キャリアアップ⇒高収入)、という誤解はさすがに無いと思うけど。。。

 

 言語能力、仕事力以外にも、グローバルに働く、という意味で意識したいのがコミュニケーション能力。『英語教育幻想』の中で紹介されていた越境コミュニケーション能力というものは、別に国境や言語を超えなくても人間同士のコミュニケーションであった方がいいでしょ、って内容だった。

 

 

関連して、育むべきグローバルマインドとはどんなモノぞ、という話。

kotokotoba.hateblo.jp

 

幼児英語教育に関するオモシロイ本を紹介した過去記事もあるよ。

 

kotokotoba.hateblo.jp

 

私自身は・・・語学は「楽しみ」のひとつで、実用的な目的は特にない。今後、仕事として英語教育業界に関わろうかと迷ってはいるけど、そうなったらもうちょっと真面目に勉強・・・するかな??(笑)

 

我が子に関しては、今のところ優先順位低め。でも特別意識していないだけで、絵本、歌、ビデオは英語も楽しめてるから、そこまで「非日常」な存在でもない。

 

kotokotoba.hateblo.jp

アルファベットは読めるらしい。フォニックスは「c...a...t.......cat!!」とかいうときもあるけど、真似してるだけで「音を組み合わせて単語が出来ている」という意味は分かってなさそう。

 

Anyway、

 

言語習得理論もそうだし、科学的に「これは確かだ!!」と言われることなんてあくまでのその時点でわかっていること、ってことを頭の隅に置いておきたい。