外国語を学ぶ過程のなかでいちばん面倒でありいちばん大切でもあるのが「ボキャブラリー」。単語を覚えること。この「覚える」という行為は語学に限らず勉強全般で避けては通れない道。そしてそのやり方は千差万別、どのやり方が合うのかも十人十色。
今回紹介する【Goldlist Method(ゴールドリストメソッド)】というのは、長期記憶の特性に注目してUncle Davey(ディビィおじさん)が発案したもの。
長期記憶(long-term memory)とは、自分の経験や言語(母国語)、楽器の弾きかた、自転車の乗りかたなど長い間頭のなかに残っている記憶のこと。一方で短期記憶(short-term memory)って言うのは短い間しか保持されない記憶のこと。
長期記憶は意識の及ばない部分(無意識)で働く機能なのに対して短期記憶は意識的な作業だから、暗記術や記憶術ってやつは基本的に短期記憶に対するアプローチだと言える。
短期記憶として一時的に保管された情報でも何らかのトレーニングによって長期記憶に移行させることができるんだけど、ゴールドリストメソッドはこの短期記憶を経由せずに直接長期記憶に情報を放り込むためのメソッドだから、ある意味人間が持つ自然な習性としての記憶力にフォーカスした方法だと言える。
他の暗記術や記憶方法と大きく違うのは、「覚えようとしない。がんばらない。リラックスして、楽しむこと」を大前提としていること。
ゴールドリストメソッドが大切にしているポイント3つ
ポイント1:暗記術、記憶術は使わない。
例えばダジャレやこじつけストーリーで単語を暗記するやり方は、短期記憶のための学習方法になる。もちろん短期記憶から長期記憶に移行することは可能なんだけど、ゴールドリストメソッドは直接長期記憶に働きかけるためのものだからこういったやり方は逆に「時間のムダ」と見なされる。
ポイント2:詰め込み学習、時間に追われるような勉強はしない。
大切なのは気張らず、楽しく、リラックスして学習すること。これは「勉強」というより「学習」の方法なのだ。
ポイント3:栄養、水、空気、太陽光、睡眠はとっても大切。
記憶に役立つ栄養素と言えばオメガ3、ビタミンD。オメガ3は青魚やくるみに豊富に含まれている脂肪酸の一種で、頭がよくなる栄養素として知られている。ビタミンDはお日様に当たることで体内で生成される他、お魚、卵黄、きのこ類から摂取できる大切な栄養素。長期記憶は人間の自然な能力のひとつ、ということはそれを最大限発揮するために健康は欠かせない!ってことだね。
実際のやり方(ゴールドリストの作り方)
じゃあ実際にゴールドリストメソッドって何をするのか?やり方はいたってシンプル。簡単で、地味なアナログ作業。(手書きの作業ってのも長期記憶のための重要なポイント)
GOLDLIST METHOD for Beginners | Christopher Huff
ディビィおじさん本人の解説動画よりも、実際にこのメソッドを使ってる人のビデオの方が分かりやすい。でもどれも長い。上のビデオはいちばんシンプルで基本的なやり方を紹介しているもの。文字を目で追わないといけないのがちょっと面倒だけど、わかりやすくまとめている。
準備するもの
・ステキなハードカバーのA4ノート(34行以上のもの)
・お気に入りのペン
使っていてワクワクするもの、楽しい気分になれるものがヨロシイ。
ステップ1:ノートの左上にその日の日付を記入する
ノートは見開きで使うから、いちばん最初の半ページは使わない。
ステップ2:各行に番号をふりながら覚えたい単語を書いていく
ここで書き出す単語は25個。できるだけゆっくり、丁寧に、覚えようとせずにリラックスして楽しい気分で取り組むこと。書くことを楽しむこと。そして20分以上は時間をかけないこと。もし20分経ってしまったら、どれだけやる気があっても最低10分は必ず休憩するか他のことをすること。これは無意識の部分で集中できている限界の時間らしい。どれだけ気分が乗っていても、20分以上は長期記憶のための学習という観点では時間のムダになってしまう。
このリストが「ヘッドリスト」になる。ヘッドリストは毎回必ずノートの左ページ1行目からスタートすること。このときページを半分に分けて、左側に学習言語、右側に訳文を書く。
ステップ3:ヘッドリストを声に出して読み上げる
ステップ4:休憩を挟みながら作業を続ける
20分の作業と10分の休憩のあと、もしまだやる気があってもっと続けたいと思うなら、次のページの左上に日付を書き入れてリストの続きを作る。番号は前のページの続きになる。(2ページ目は26~50、3ページ目は51~75・・・)ただし1日に10ページ以上は進めないこと。
ステップ3:2週間後にヘッドリストのあぶり出し作業を行う
リスト左上の日付から2週間経つまでは見直したり書き直したりしないこと。どれだけ待ち遠しくても、ただ放っておく。これは短期記憶に惑わされないための大切なルール。ただし2ヶ月以上間を開けないこと。ゴールドリストメソッドの前提は時間に追われずにリラックスして取り組むことだけど、作業を怠けて何もしなければ元も子もない。一定のテンポを保てるように作業の間隔は2週間以上、2ヶ月以内を目安としている。
エビングハウスの実験によると、この2週間前のヘッドリストのうち(覚えようと意識していなくても)30%ほどの単語はまだ頭の中に残っていることになる。
ゴールドリストメソッドのあぶり出し作業とは、ヘッドリスト25個の単語のうち70%を残して30%をリストから取り除いて(distill)しまうこと。
ヘッドリストに目を通して、「これは覚えにくいな、難しいな」と思うものを 17個だけピックアップして、残り8個の単語は捨てる。捨てる単語を決めきれなければ他の単語と合体させてひとつにまとめてしまってもいい。でも、この「捨てる」という行為だって無意識下の作用で「記憶に残る」方向に働くらしい。興味を持てない、面白いと思えない語、覚えておかなくてもいいかな、と思える単語はバッサリ切り捨てよう。
ヘッドリストから選ばれし17個の単語は、ノートの右ページのいちばん上の行から1行にひとつづつ書き出していく。このときノート上の余白に日付を書いておく。行の頭にはそれぞれ1~17の番号をふる。第一回あぶり出し作業は、この17個の単語を読み上げて終了。次の作業はまた2週間後になる。基本的ルールは同じ、覚えようとせず、リラックスして、ゆっくりと書くことを楽しむこと。
ステップ4:第二回あぶり出し作業
やることは第一回と同じで、右ページの下(17番の単語の下の余白)からスタートする。第二回であぶり出すのは12個。17個の単語のうち5個は捨てる。
ページ右下の余白に作業をした日付を記入しておく。12個の単語を読み上げたら、次のあぶり出し作業までまた2週間(~2ヶ月以内)ノートを閉じて楽しみに待とう。
ステップ5:第三回(最終)あぶり出し作業
見開き2ページで行えるあぶり出し作業は計3回。3回目が最終あぶり出しになる。記入するのはノート左側の下部分、ヘッドリストの下。最後は12個の単語のうち残すのは9個。
こうやって3回のあぶり出しを終えたものが「ブロンズノート」。4回目以降は新しいノート「シルバーノート」に移行する。シルバーノートのヘッドリスト25個の単語は、ブロンズノートの最終リスト9単語から写していく。
ステップ6:シルバーノートからゴールドノートへ
シルバーノートでも同様に25→17→12→9と3回あぶり出し作業を行う。そして次のノートが「ゴールドノート」。ここで最後まで残った単語がリストがゴールドリストと呼ばれるものになる。
マイ・ゴールドリストを作ろう!
今年は月末の出産予定日まで家で退屈するだろうから、オランダ語でゴールドリストを作ってみようと思う!!
早速かっこいいノート(A4じゃないけど)と単語集を買ってきたよ。ペンはとりあえず手元にあるフリクションボールペン黒を使おうかな。4ブロック色分けしている人のノートをYoutubeで見たけど、それも楽しいかもな~。
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1日2セクション(20分+休憩10分+20分)、週に5回で3週間ならヘッドリストは700語前後作れるかな。実際にどれくらい単語を覚えていけるのか、実験だ!ブロンズノートが完成するのに最低6週間、一月半かかるから経過報告は結構先になりそう。他の人が作ったブックも見てみたいな!
興味ある人始めてみませんか、ゴールドリストメソッド!