ことばのおもしろさ研究所

語学好きな母ちゃんが、子どもの言葉の成長と外国語学習の奥深さ、心に響いた本なんかを記録しているブログ。

語学に関するオモシロイ本あれこれ+マルチリンガルはこうやってゴガクしている!

最近読んで面白かった語学関連の本! 

 

外国語学習の科学―第二言語習得論とは何か (岩波新書)

外国語学習の科学―第二言語習得論とは何か (岩波新書)

 

 

第一章 母語を基礎に外国語は習得される

第二章 なぜ子どもはことばが習得できるのか

第三章 どんな学習者が外国語学習に成功するか

第四章 外国語学習のメカニズム

第五章 外国語を身につけるために

 

子どもは教え込まれなくても母語の習得にほとんど成功するのに、大人の学習者が外国語を習得するのが難しい(難しく感じる)のはなぜだろう?という疑問を科学的にケンキューしてみたのが第二言語習得論(SLA)。その概要と、学習者が活かせそうなポイントをまとめてある本。 

第二章では子どもの言語習得について書かれているから、子どもの外国語の早期教育に関心ある人にも面白い内容だと思う。

 

例えば臨界期。この章の副題が「臨界期仮説を考える」。

今現在のSLAの見解からすると、国語学習の成否を左右する要因のひとつが「学習開始年齢」だということは確かだそう。ただしその分水嶺が何歳なのかは意見が分かれている。発音や聞き取り能力と、文法や文構造の習得に関する臨界期は違っていて一概に何歳までに・・・とは言えない。

それに臨界期が脳の構造によるものなのか、心理的態度によるものなのかも実はハッキリしていない。母語が確立しているかどうかが影響していそう。

 

 

本書後半の外国語学習法で紹介されていたインプット仮説、これも語学する人は知っておくと役立つ理論。「聞き流し」や「かけ流し」「聞くだけでペラペラ!」とうたう広告のベースにあるのはたぶんこの理論。ただしちょっと誤解されている節があって、ただワカラン言葉を何十時間何百時間聞いても無意味!時間の無駄だってこと。

 

ポイントは理解可能なレベルでの大量のインプット。そして言語は無意識に習得するものであって、意識的に学習したことばはあんまり役に立たない。(これはちょっと極端な説だから、意見が分かれるみたい)

インプット仮説をベースに語学しているマルチリンガルで有名なのはSteve Kaufman。Youtubeチャンネルもあって、結構頻繁に語学に関するビデオが更新されている。

 


Language learning - The Most Effective Method Of All

それからゴールドリストメソッド!!

 

kotokotoba.hateblo.jp

 このインプット仮説と矛盾してしまうのが、DVDやCDだけだと語学は習得できない、という研究結果。それから受容的バイリンガル(聞いてわかるけど話せない)という存在。

 


The linguistic genius of babies - Patricia Kuhl

 

そこからインプットとアウトプットのバランスについて、効果的な言語学習に必要なのは理解可能なレベルでの大量のインプット+アウトプットの必要性だ、というのが筆者の見解。アウトプットが学習初期の段階で強制されるのは言語習得にマイナスになりうる。でもアウトプットの必要性がない、もしくは自分の頭の中で文章を組み立てる練習(筆者はこれをリハーサルとしている)をしなければ話せるレベルには到達できない。というわけで「必要性」が重要。

 

 

それから英語を教える側のメソッドに関する本。 

世界で活躍する生徒を教える英語の先生になるための本

世界で活躍する生徒を教える英語の先生になるための本

 

英語を母語としない外国人に英語を教える国際的な資格にTESOLと呼ばれるものがある。普通は留学して海外の大学で単位を取って取得するもんなんだけど、日本でも受講できますよって仕組みを作った団体の、本。 

 だから内容はTESOLの概要、国内での資格取得方法、レッスンのアイディアや指導法をちょっと紹介している感じ。TESOLの基本原則、概要をしるだけでも結構学習法の参考になる。

 

例えば上の本「外国語学習の科学」でも書かれていたけど、語学の成否を左右する大きな要因の一つにモチベーションがある。生徒のモチベーションをいかに高く維持するか、その方法の一つに学習に選ぶ題材を身近なもの、関心のあるネタにする、というのがある。アウトプットしたくなるネタを選ぶ。

上の「外国語学習の科学」でもあるように「アウトプットの必要性」をつくりだす環境づくりがポイントだな、と。

 

日本の英語教育で話せるようにならない理由のひとつが、「実際に話す機会が圧倒的に少ない」ということだと思う。リピートアフターミー、教科書の音読がちょろっとあったとしても。そういう点では2020年の教育改革でコミュニカティブ・アプローチやアクティブ・ラーニングといった指導法がとられるらしいからいい方向に変わっていくことを期待。

 

そういった指導法、教育者側の情報誌もなかなか面白かった!学習法にも触れているから、英語にかかわらず外国語学習者が読んでも面白い部分があると思う。

 

英語教育 2018年 01 月号 [雑誌]

英語教育 2018年 01 月号 [雑誌]

 

指導法は中高生、大人の生徒対象かな。 

教員のための「国際語としての英語」学習法のすすめ

教員のための「国際語としての英語」学習法のすすめ

 

この本で面白かったのは、これからの英語教育で指導者が持つべき英語に対する態度。 タイトルの通り、国際語としての英語。日本人教師の日本語英語でイーンダヨー!自信をもって英語を話せる日本人を育てるために、指導者はネイティブでなきゃならんなんてこたナインダヨー!

私も、日本人のネイティブ信仰はイキスギだと思うし、英語が話せないと悩む人が多いのもそこに原因があると思ってる。

 

 

完全改訂版 バイリンガル教育の方法 (アルク選書)

完全改訂版 バイリンガル教育の方法 (アルク選書)

 

 今度はバイリンガル教育に関して、割と新しい研究結果をまとめたもの。海外に住む日本人、日本に住む外国語話者、母語教育に関する内容が多め。

年齢別の言語発達区分と、それに沿ったバイリンガル教育の方法がおもしろかった。ただし具体的な取り組みについては書いてないから、そういうのを知りたい人は実際に子どもをバイリンガルにしました!ってママさんたちが出版している本(たくさんあるよね)を読んだほうがいい。

 

バイリンガルに育つためのいちばんの決め手は、子どもの母語・母文化がどれだけ発達しているかである。

 

バイリンガル教育の立場から言えば、母語はもちろん、第二言語も教えるのではなく自分で獲得するための環境を与えること、それが重要。

 

ことばを覚える、というのは「X=ホニャララ」と呼び名を覚える以上の行為でもある。この本ではヘレンケラーが最初の言葉「水」を覚えた経緯を例に挙げている。触ってみて、口に含んで、その冷たさや質感をからだで感じて、「水」という存在とそれに名前があるということに気づく

 

kotokotoba.hateblo.jp

 

 「学び」は「気づき」。ことばも、教わるもんじゃなく身につけるもんなんだわ、と改めて思った。

 

 

最後!有名なマルチリンガルたちの学習方法を一挙大公開!動画。


Lýdia Machová - Ten things polyglots do differently [EN] - PG 2017

 

 学んだことを活かす場がほしいなぁ、と思い近所のママ友たちに実験台の(!)協力してもらってちょっとした幼児英語お遊びサークルをつくろうと計画中・・・!!好きなことができるって楽しすぎる。

 

実験台第一号の息子イチ君の言葉の発達観察レポートと、幼児期の英語教育プランについてもブログにまとめたいな!